注目の「位置情報」と「ゲートウェイ」について代表 佐藤が語る -『SATEX 衛星測位・位置情報』展 講演-

2020年11月4日から6日にかけて、東京ビッグサイトにて『SATEX 衛星測位・位置情報』展が開催され、来場者は3日間で約12,300名でした。

最終日の11月6日、マルティスープ株式会社主催で開催された複数企業のリレー形式のセミナープログラムにて、弊社代表そして『obniz』開発者である、佐藤雄紀が講演を行いました。
本記事では、当日の講演の内容をダイジェストでご紹介します。

『obniz』について

今回は弊社の『obniz』という技術、そして、屋内系位置情報測位システムでの活用についてお話します。

弊社は、測位技術などで使われるBluetoothに対応したゲートウェイを提供しています。2020年の春から発売を開始し、マルティスープ株式会社様の提供するサービスにも利用していただいています。

国内のさまざまな企業の位置情報系のサービスをはじめ、ヘルスケア機器や温度湿度のセンサーをネットに上げてデータを閲覧できるようにするシステムなど、各種センサーのクラウド化に活用されています。

obnizについて

まず、弊社のゲートウェイにも採り入れている『obniz』というテクノロジーについてご説明します。

『obniz』の技術は、電子回路で使える、つまりマイコンで動くOS(obnizOS)と、専用のクラウドを提供しています。このOSを搭載したデバイスは、SPI(Serial Peripheral Interface)やUART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)などの電気的な通信による接続や、BLE(Bluetooth Low Energy)などの無線通信でさまざまな機器に接続することができます。これを「オールインプラットフォーム」とも呼んでいます。

obnizによるIoT導入のステップ

通常、IoTのために何らかの電子部品や回路をインターネットにつなげる際には、管理するためのサーバを用意して実際のアプリケーションを作るという流れになります。

『obniz』を使う場合、サーバーもしくはスマートフォンで動くようなアプリケーションだけ用意していただければ、簡単にIoTを構築できます。

まずは『obnizOS』搭載のマイコンやゲートウェイをBluetoothでも有線LANでも、もしくは単純なオン・オフのようなやり方でもよいので、操作対象となる電子回路や部品につなぎます。

次に、『obniz』のデバイスをインターネットに接続します。弊社で提供しているのはWi-Fiか、Ethernet(イーサネット)またはセルラーの3タイプです。後はクラウド上から操作するために、サーバーサイドでのIoTのソフトウェア開発を行うだけです。

obnizによるIoT導入の3ステップ

obnizの『ファームウェアレス』技術

『obniz』 を使うと全てクラウド上で書き込めるのが最大の特長です。エッジ側のファームウェアが不要の「ファームウェアレス」技術のため、Bluetooth機器を後から追加するときや、システムをこれから作るといったときに、ソフト開発が非常に容易です。

ソフト開発の工数削減

もうひとつ「ファームウェアレス」技術による大きなメリットは、ソフト開発の工数を減らせるということです。IoTの開発プロセスのうち、ソフト開発に全体の4割、ハードウェアは1.5割と言われているのですが、『obniz』を利用することで、ソフト開発にかかる工数を大きく圧縮できます。

Web技術だけで作れるIoTプラットホーム

開発のための言語を問わず対応できるため、HTMLやJavaScriptが触れるWebエンジニアだけでも『obniz』でIoTシステムをある程度作れてしまいます。HTMLやJavaScriptで作れるわけですから、即日作って即日内容を変更することももちろん可能です。

『obniz BLE/Wi-Fiゲートウェイ』の他社製品との違いや特長

『obniz BLE/Wi-Fiゲートウェイ』はコンセントに直接挿せるタイプで、その名前の通り、Bluetooth(BLE)とWi-Fiの機能を持つ、プログラマブルなゲートウェイです。

屋内位置情報系であればBluetoothを用いることになるため、『obniz』が提供する公式デバイスの中では『obniz BLE/Wi-Fiゲートウェイ』が最適です。

obniz BLE/Wi-Fiゲートウェイ

このゲートウェイの最大の特長は、1台あたり10,780円(税込)という価格です。この価格には、弊社の『obniz Cloud』のクラウド機能の無期限の利用権が含まれています。
そのため、一度購入すれば、クラウド上でオンラインまたはオフラインの監視、そしてAPIの呼び出し、『obnizOS』というプログラムのアップデートなど全てを利用できます。インターネットとのデータ通信や死活監視が全て標準でついているのがユニークポイントであり、ベネフィットです。

現在のお取引先のうち、ある建設会社では、建設現場にてこのゲートウェイが多数導入されています。仮にゲートウェイが100台必要だとしても、導入費用は約100万円となります。

また、価格以外にも以下のような特長があります。

キッティングが不要

ひとつは、現場でのキッティングが不要であるという点です。

キッティング作業では通常、現地でプログラムを書き込むプロセスや、設定ファイルを書き込むプロセスがあります。屋内位置情報系のシステムではこのキッティング作業において、「どんなビーコンを拾うか」「ビーコンを拾ったときにどう動作するか」といったプログラムをデバイスひとつひとつに書き込む作業が必要です。
『obniz』の技術では、それらが全てクラウド上で完結します。現地では、ゲートウェイをネットワークにつなぐことさえ行えば、その他の工程は現地で行う必要はありません。

クラウドで遠隔監視・メンテナンス

ふたつめは、設置後はクラウド上からの保守によって、管理や保守のコストを下げられるという点です。

たとえば、”特定のゲートウェイの挙動がおかしい”といった問題が生じた際、電波が弱いのか、それともゲートウェイ自体に問題があるのかを、わざわざ現地に行かなくともクラウド上で確認できます。現地に人員を派遣して、その都度作業をする必要がなくなるため、コストが抑えられるのです。

『obniz BLE/Wi-Fiゲートウェイ』の機能

自由度の高いプログラムで仕様変更に柔軟に対応

この『obniz BLE/Wi-Fiゲートウェイ』は、接続アドバタイズメント、セントラルやペリフェラルどちらにもなるため、自由にプログラムができます。そのため、設定や運用開始後に目的や対象が変更になることがあっても、容易に対応可能です。

たとえば、「これまで使っていた温度センサーが廃盤になってしまったから、他の機種に変更する必要がある」「ドアの開閉センサーを外したい」といった場合も、ゲートウェイに変更は加えず、現地に必要な別のセンサーを送るだけで対応できます。そして、センサーの設置方法の指示さえすれば、あとはクラウド上で全ての更新作業が行えます。

加えて、『obniz』とBluetoothを使って対象物の値を取ったり、対象物を動かすといったさまざまな操作は、公式サイト上でオープンソースとして多数ライブラリ化しているため、自由にご利用いただけます。

リアルタイム・双方向通信

他の機能を補足すると、『obniz BLE/Wi-Fiゲートウェイ』は、デバイスとクラウドの双方向通信が可能です。ゲートウェイをネットワークにつなぐと常時接続状態になり、たとえば、「Bluetoothのスキャンをして、取った値を返してください」と指示を送ると、「こういったビーコンが見つかりました」と通信してきます。

このように常にやり取りができますから、SPIやUART、BLEでつないだ温度センサーから値を取ってくる作業もリアルタイムで行えます。

特定のゲートウェイのみ挙動を変える

仮に、1拠点に設置された100台のゲートウェイに対して、通常はビーコンの信号を取得するようプログラムされているとします。そのなかで、建物の3階部分のゲートウェイのみ「温度センサーの値も取りたい」となった場合、3階に設置した『obniz』のゲートウェイのみ、温度センサーを見つけたら接続して温度の値を取得しAPIに投げるということを、クラウド上のひとつのプログラムのなかで書き加えることができます。

リスクヘッジについて

産業用途でIoTシステムを構築する際には、さまざまなリスクが課題となります。

たとえば、プログラムが書き込まれたデバイスの盗難リスクが挙げられます。
弊社のデバイスの場合は「ファームウェアレス」技術のため、作成したプログラムはデバイス上には存在しません。仮にゲートウェイ/マイコンが盗まれたとしても、弊社のデバイス上で動く『obnizOS』というソフトウェアが少し漏れる程度で、リスクは最小限に抑えられます。

他にも、ゲートウェイのホストの暴走も挙げられます。LinuxやWindowsといった汎用OSの場合、巨大ソフトウェアのため、攻撃ターゲットになったり、何らかの原因で暴走したり動かなくなることがあります。弊社の製品では、自分たちで管理している状態のため、いわゆる汎用OSにありがちな大きな障害は起こりにくいと言えます。


クラウド機能が付帯するという特長を活かし、『obniz』の技術を搭載したゲートウェイは、ビーコンやBLEセンサーを用いた屋内系位置情報測位システムに活用されています。

料金体系や具体的な導入事例、そのほか本日お話したことは、公式サイトにも掲載しておりますのでご参照ください。