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IoTとは?(Internet of Things、モノのインターネット)

IoT(Internet of Things、モノのインターネット)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。IoTとは、「さまざまなモノがインターネットにつながり、情報交換が行われる」というテクノロジーです。

いま、IoTは確実に私たちの生活に浸透しつつあります。今後、あらゆる産業・ビジネスはIoT無しで語れなくなるでしょう。本記事では、そんなIoTを徹底解説いたします。

IoT(Internet of Things、モノのインターネット)の意味

IoTの概念

少し前まで、インターネットにつながるモノはパソコンなどのごく一部の端末に限られていました。その後、携帯電話やスマートフォンが登場し、誰でもいつでもインターネットに接続できる時代がやってきました。

そして現在、パソコンやスマートフォン以外にも、多様なモノがインターネットにつながっています。例えば、家電製品、建築設備、医療機器、物流設備などなど…。このような、さまざまなモノがインターネットにつながるテクノロジーが、IoTです。今後、インターネットにつながるモノの数は爆発的に増え続けると考えられています。

IoTの仕組み

IoTにおいて、インターネットにつながるモノをIoTデバイスと呼びます。例えば、インターネット経由で操作ができるエアコンなどは、IoTデバイスです。

このとき、IoTデバイスと通信するインターネット情報システムがIoTクラウドです。IoTとは、IoTデバイスとIoTクラウドの間で通信が行われることによって成り立っているのです。

IoTエアコンの例(Panasonic社 エオリア)

以下の記事では、IoTシステムについてより詳しく解説しています。ぜひ、ご覧ください。


IoTとM2Mの違い

IoTと似た意味をもつ言葉に、M2M(Machine to Machine)があります。

M2Mとは、機械(Machine)同士が通信するテクノロジーで、IoTと異なり、データをインターネットに送信する機能までは含まれません。また、IoTは機械と人がやりとりすることもあるのに対し、M2Mはあくまで機械同士の世界です。

いまIoTが注目されている理由

なぜ、いまこれほどまでにIoTが盛り上がっているのでしょうか。これには、テクノロジーの発展や、ディープラーニングによる第3次人工知能ブームが深く関わっています。


テクノロジーの発展

IoTの実現には、小型省電力なセンサーや高速大容量な通信、大量のデータを高速に処理できるコンピュータなどが必要不可欠でした。技術革新によってこれらが実現したことにより、IoTが一気に普及しました。


第3次人工知能ブームとディープラーニング

IoTの広まりは、人工知能やディープラーニングといったテクノロジーとも密接に関連しています。

人工知能とは、「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術(東京大学、松尾豊先生による定義)」で、これまで3回のブームがありました。2010年代~現在にかけて続いているブームが、「第三次人工知能ブーム」です。

第三次人工知能ブームのトピックスは、ディープラーニング(深層学習)です。ディープラーニングとは、脳の神経細胞を模した人口ニューロンを多数組み合わせた計算モデルです。複雑な計算が必要ですが、コンピュータの性能向上によって近年ようやく実現されました。また、ディープラーニングには大量のデータが必要で、「ビッグデータ」というワードも大きな話題となりました。

そして、このビッグデータの収集方法として注目されているのが、IoTです。IoTはセンサーの情報をインターネット経由で取得できるため、大量のデータを収集することができ、またその扱いも容易です。IoTによって収集されたデータをディープラーニングで解析することで、新たな価値が生まれると期待されているのです。

第4次産業革命とIoT

IoTやAI(人工知能)を活用して、あたらしい社会を作ろうという動きが活発になっています。これに関連するキーワードとして、「第4次産業革命」「インダストリー4.0(Industry 4.0)」「ソサエティ5.0(Society 5.0)」の3つをご紹介します。


第4次産業革命

第4次産業革命というのは、文字通り「4回目の産業革命」です。蒸気機関が発明され工業化が始まった18世紀後半が第1次産業革命、電気と石油によって重工業が発展した19世紀後半が第2次産業革命、コンピュータの発展やインターネットの登場によってIT社会が実現した20世紀後半~21世紀前半が第3次産業革命、そしてそれにつづく第4の産業革命が、第4次産業革命です。

第4次産業革命のビッグテーマは、IoTとAIです。内閣府は、日本経済2016-2017において、第4次産業革命を以下のように説明しています。

第4次産業革命とは、(中略)、次のようないくつかのコアとなる技術革新を指す。

一つ目はIoT及びビッグデータである。工場の機械の稼働状況から、交通、気象、個人の健康状況まで様々な情報がデータ化され、それらをネットワークでつなげてまとめ、これを解析・利用することで、新たな付加価値が生まれている。

二つ目はAIである。人間がコンピューターに対してあらかじめ分析上注目すべき要素を全て与えなくとも、コンピューター自らが学習し、一定の判断を行うことが可能となっている。加えて、従来のロボット技術も、更に複雑な作業が可能となっているほか、3Dプリンターの発展により、省スペースで複雑な工作物の製造も可能となっている。

日本経済2016-2017 – 内閣府

すなわち、IoTによるビッグデータ収集と、AIによるデータ分析によって、新しい価値が生み出されることが期待されています。以上より、第4次産業革命を「データ革命」と呼ぶ人もいます。


インダストリー 4.0

インダストリー 4.0は、製造業の革新を目指してドイツ連邦政府が策定したプロジェクトで、IoTを基盤としています。

類似のプロジェクトは各国で立ち上がっており、アメリカでは「インダストリアル・インターネット」、フランスでは「インダストリー・オブ・ザ・フューチャー」、中国では「中国製造2025」、シンガポールでは「スマート・ネーション・プラットフォーム」などと呼ばれています。

日本でも「日本版インダストリー 4.0」という言葉が普及しつつあります。また、経済産業省は目指すべき産業の在り方として、「Connected Industries」という概念を提唱しています。

(参考:Connected Industries(METI/経済産業省)


ソサエティ 5.0

ソサエティ 5.0(Society 5.0)は、日本が提唱している「日本が目指すべき未来社会の姿」で、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指しています。

内閣府のWebサイトには、Society 5.0について以下の記載があり、ここでもIoTが中心的な役割を担っていることが分かります。

Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。

Society 5.0 – 科学技術政策 – 内閣府

IoTでできること

IoTでできることの代表例として、環境・状態の遠隔監視、遠隔操作、異常検出の自動化、人やモノの見える化、をご紹介します。


できることその① 環境・状態の遠隔監視

温度や位置情報など、モノの環境・状態を監視しなければならない状況は多々あります。温度を知りたいのであれば、今までは温度計を設置してその値を見ていたことでしょう。

ここで、もし温度計がインターネットに接続されていたらどうでしょうか。その温度計の情報は、世界中のどこからでも確認することができるようになります。つまり、世界中に散らばっている無数の温度計を、たった1つのパソコンで監視することもできるようになるのです。わざわざ温度計の値を見に行く必要はありません。


できることその② 遠隔操作

IoTを使えば、遠隔で監視するだけではなく、操作まで行うこともできます。モーターやスピーカー、ディスプレイなどをIoT化することで、それらをインターネット経由で遠隔操作できるのです。

例えば、屋外でもスマートフォンから操作できるようなエアコンが販売されており、IoTを遠隔操作に活用している例と言えます。他にも、「時刻や天候に応じて自動で開閉するカーテン」「増水時に遠隔で操作できる水門」「インターネット経由で表示を制御できる商品の値札」など、活用方法は無限に広がります。


できることその③ 異常検出の自動化

さまざまなIoTセンサーを活用することで、異常検出を自動化することができます。例えば、バッテリーの電圧が下がってエラーが起こるようなシステムがあったとき、IoTの電圧計を用いれば、電圧低下をインターネット経由で探知できます。データはインターネット上で処理できますから、「○○ボルト以下になったら自動でアラートを出す」というシステムを作ることも簡単です。

また、AI(人工知能)を活用して、正常な動作時とは異なるデータを検出した際に、自動でエラーを通知するようなシステムを構築することもできます。この場合、正常に動作している状態(定常状態)のデータを収集してAIにあらかじめ学習させておく手法が多く用いられます。


できることその④ 人やモノの動きの見える化

IoTの魅力の1つは、大量のセンサー情報を容易に分析できることです。そこで、今まではあまり可視化されていなかった、「人やモノの動き」を可視化する試みが行われています。

ビーコンやRFIDタグ等などの端末を利用することで、オフィスや工場内の人やモノの動きを監視することができます。例えば、iOS7以降のiPhoneやiPadではiBeaconと呼ばれるビーコン機能が標準搭載されており、東京駅構内のナビゲーションサービスなどで活用されています。また、自動車や航空機等の広範囲な位置情報取得などではGPSを活用することもできます。

だれがどこにいるのか、どこに何があるかを把握できるのはもちろんのこと、得られたデータをより最適なオフィス設計、工場設計などに活用することもできます。

IoTの産業別活用事例

製造業での活用事例

製造業ではすでに多数のIoTが普及しています。環境・状態の遠隔監視、遠隔操作、異常検出の自動化、人やモノの見える化、といったIoTの得意分野は、製造業と非常に相性が良いのです。

例えば、以下の動画では世界中に展開された採掘機械からデータを収集し、稼働率改善やコスト削減、製品開発への応用などを行っている事例が紹介されています。

機械の圧力や温度、電流、電圧、その他のセンサーからの時系列データに加え、イベントデータやサードパーティシステムからのデータなどが含まれています。1台のマシンには数百から数千ものデータ指標があり、1分間に3万~5万におよぶタイムスタンプ付きデータが生成されます。

コマツマイニング:IoTと機械学習により機器の稼動率を2倍に向上

との記載がある通り、「遠隔監視」「大量のセンサーによる見える化」というIoTのメリットを最大限に活用したソリューションとなっています。

以下の記事では、製造業における他のIoTの活用事例を詳しくご紹介しております。


農業での活用事例

IoT等の最新技術を活用した農業を、スマート農業と呼びます。IoTの活用によって、農作業の省力化や農業技術のデータ化、信頼性・品質の向上などが実現すると期待されています。

以下の動画は、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)が実施した、スマート農業ソリューションの実証実験です。IoTセンサーで水田の水位および水温を測定し、測定データの遠隔監視や自動給水弁の遠隔操作が可能です。これにより、水管理にかかる移動距離が12.8 kmから6.6 kmまで減少し時間も7~8割削減されたと報告されています。

スマート農業ソリューションの実証実験

以下の記事では、スマート農業のメリット・デメリットや農業におけるIoTの導入事例を詳しくご紹介しています。


自動車・CASE・MaaSでの活用事例

いま、自動車産業は100年に1度の大変革が起きていると言われていますが、その変革を牽引している技術の1つがIoTです。この大変革で注目を集めているキーワードとして、コネクテッドカー、自動運転、シェアリングサービス、電気自動車などがあり、これらの頭文字をとって「CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)」と呼ばれることもあります。※CASEという言葉は、2016年のパリモーターショーで発表されたダイムラー社の中長期戦略の中で使われたとに端を発しています

コネクテッドカーや自動運転は、IoTと深く関係しています。まず、コネクテッドカーというのは「インターネットに接続された車=IoT化された車」のことです。アクセルやブレーキなどの車の情報だけでなく、渋滞情報や天気予報、駐車場の空き情報などをインターネット経由でリアルタイムに取得できるようになります。また、自動運転は大量のデータを外部とやりとりすることによって実現すると考えられています。このとき、データの収集と通信のテクノロジーはIoTそのものと言えます。

コネクテッドカーのイメージ動画

また、シェアリングサービスや電気自動車を含めたCASEの概念は、MaaS(Mobility as a Service)という概念とも密接に関係しています。MaaSとは、さまざまな移動手段(マイカー、公共交通機関、配車サービス、ライドシェアリングなど)を1つに統合したようなサービスです。例えば、「目的地を設定するだけで、そこに至るまでに利用する電車やバス・タクシーのチケット手配や予約を一括で行ってくれて、料金も一括で精算できる」というようなアプリは、MaaSのアプリケーションの1つと言えます。MaaSについては、以下の記事で詳しくご説明しています。


物流での活用事例

IoTやロボティクス、人工知能などの最先端の技術を用いて物流の効率を高める取り組みを、スマートロジスティクスと呼びます。例えば、荷物1つ1つにFRIDタグを付けてIoT化することで、位置情報を自動で取得できるようになります。これにより、在庫の照会、補充、履歴管理などを自動化できます。

また、配送トラックの位置情報をインターネット経由で取得することで、より効率的な配車や配送ルートを探索することもできます。以下の動画では、iPhoneのビーコン機能を用いたIoTシステムにより、運送トラックの待機時間削減を実現された事例が紹介されています。

スマートロジスティクスの事例

物流業界へのIoT活用については、以下の記事で詳しくご説明しております。


小売・店舗での活用事例

小売業界も、IoTで大きく変革できる産業の1つです。例えば、米アマゾンが提供する無人コンビニ、「amazon go」は次世代のコンビニエンスストアとして注目を集めています。amazon goにはレジが無く、棚からとった商品をそのまま自分のカバンやリュックサックに入れて退店することができます。この技術の詳細は明らかにされていないのですが、多数のIoTセンサー情報をディープラーニングによって解析していると言われています。

amazon goの紹介動画

また、日本でも2019年にファミリーマート株式会社とパナソニック株式会社が、IoTを活用した「次世代型コンビニエンスストア」の共同実証実験を行うなど、確実に変化が起きています。小売業界へのIoTの活用事例については、以下の記事で詳しくご紹介しております。

IoTを支える技術

IoTが普及した背景には、小型・省電力のセンサー、高速大容量の通信方式など、さまざまな技術の発展があります。ここでは、IoTを支える技術について詳しくご紹介します。


クラウド技術

IoTにおいて、IoTデバイスと送受信されるデータを処理・蓄積するのが、IoTクラウドです。IoTデバイスはインターネットを通じて、IoT用に準備されたクラウド(IoTクラウド)に接続されます。

クラウド(クラウドコンピューティング)は、コンピューターの利用形態の1つです。サービスはインターネットを通じて提供され、インターネットに接続されたパソコンやスマートフォンで利用できます。例えば、Googleの提供するGoogleカレンダーやスプレッドシート、Gmailなどは全てクラウドサービスです。

クラウドの種類

クラウドサービスには、システムの稼働に必要なストレージやプロセッサなどのインフラ基盤のみを提供するIaaS、インフラ基盤に加えてOS等のミドルウェアも提供するPaaS、インフラ基盤やミドルウェアに加えてアプリケーションまで提供するSaaSがあります。

IoTサービスの開発を行う場合は、SaaSのサービスを利用するパターンや、AWS(Amazon Web Service)やMicrosoft AzureといったIaaS、PaaSサービスに自主開発したアプリケーションを導入するパターンなどがあります。

以下の記事ではクラウドシステムについて、より詳しく解説しています。


無線通信技術

IoTデバイスをインターネットに接続するとき、多くの場合は無線通信を利用します。無線通信とひとくちに言ってもさまざまな種類があり、例えば通信距離によって以下のように分類することができます。

  • 短距離無線
  • 無線PAN(Personal Area Network)
  • 無線LAN(Local Area Network)
  • 無線MAN(Metropolitan Area Network)
  • 無線WAN(Wide Area Network)

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・ NFC

ICカード等で広く用いられている通信規格で、通信距離は10 cmほどです。交通系ICカード等で用いられているFelica、たばこの成人認証システムtaspoで用いられているType-A、運転免許証やマイナンバーカードで用いられているType-Bの3タイプがあります。

・ Bluetooth、BLE

Bluetoothは数10メートル程度の比較的短い距離を通信するのに適した通信方式です。ワイヤレスのイヤホンやスピーカーなど、身近なところで広く利用されています。いくつかのバージョンがあり、2016年に発表されたBluetooth5.0は通信可能距離が400メートルにも達しています(125kbps時)。BLE(Bluetooth Low Energy)はBluetooth4.0の一部として開発された、大幅に省電力化されたBluetoothの通信規格です。スマートフォンと電子機器との通信でよく利用されます。

・ Wi-Fi

Wi-Fiは、スマートフォンやパソコンの通信規格としてよく使われています。Bluetoothと比較して通信距離が長く通信速度も速いため、大容量の通信を要するIoTデバイスや、ホールなどの広い室内でIoTデバイスを使う場合に利用されます。macOSやiOSに搭載されているAirDropは、BluetoothとWi-Fiを組み合わせて手軽な高速通信を実現しています。

・ 3G、LTE、4G、5G

3G、LTE、4Gは、携帯電話やスマートフォンの通信で用いられている通信規格です。例えば自動車をインターネットに接続する場合など、BluetoothやWi-Fiでは対応できない大容量の長距離通信が必要とされる場合に利用します。5Gは現在開発が進められている次世代の通信規格で、これまでの無線通信と比較して通信速度が大幅に向上しています。

・ LPWA

LPWA(Low Power Wide Area)は、省電力で長距離通信可能な無線通信プロトコルの総称で、LoRaやSIGFOX、Wi-SUNなどが該当します。小さいIoTデバイスのデータを長距離通信する場合は、3G、LTE、4G、5Gといった携帯電話・スマートフォンの通信規格だとオーバースペックであることが多く、LPWAを用いた方がコスト面で優れていることが多いです。

以下の記事では、IoTで使われる無線通信について詳しく解説しております。


データ通信プロトコル

IoTとデータを送受信する際のプロトコルとしては、Webサイトの閲覧などで良く用いられるHTTPやWebSocketはもちろんのこと、IoTに適したCoAP、MQTTなども利用されることがあります。

・ HTTP

Webサイトを閲覧する際など、WebブラウザとWebサーバー間の通信でよく利用される通信プロトコルです。トランスポート層のプロトコルにTCP/IPを用いるため、通信回数が多いという欠点はありますが、多くのWebシステムやネットワーク機器がHTTPに対応しているという使いやすさがあります。現在はHTTPをSSL/TLSで暗号化したHTTPSが使われることも多いです。

・ WebSocket

Webアプリケーションにおいて、低コストで双方向通信を行える通信規格です。HTTPでコネクションを確立した後、専用のプロトコルで双方向通信を行います。IoTでは、後述するMQTTと組み合わせたMQTT over WebSocketが使われることもあります。

・ CoAP

非同期通信をサポートする、軽量の通信プロトコルです。性能の低い小型デバイスでも動作するため、M2Mの領域で良く使われます。HTTPとは異なりUDPが利用できるため、通信を簡略化することができます。ただし、トレンドマイクロ社は「CoAPは、UDPに基づく通信プロトコルであるため、本質的にIPアドレスのなりすまし攻撃を受けやすい」と指摘しており、セキュリティ面では注意が必要です。

(参考 M2M通信を支えるプロトコル「MQTT」「CoAP」が抱える課題、さまざまな攻撃の可能性 | IoT Security

・ MQTT

軽量の通信プロトコルで、CoAPと同様にIoT分野で普及しつつあります。送信側と受信側の間にブローカーと呼ばれる中継サーバーが存在する点が特徴です。MQTTをWebSocketでカプセル化したMQTT over WebSocketを利用すると、MQTTとWebSocket間の相互通信が可能になり、MQTTに対応していないファイヤウォール等にも対応できるようになります。CoAPと同様、セキュリティ上の課題が指摘されている点には注意が必要です。

MQTTとCoAPのセキュリティ課題

AI・機械学習・ディープラーニング

IoTとAIは相性がよく、これら両方を組み合わせる試みは広く行われています。第四次産業革命やインダストリー4.0、Society5.0といった国家主導のプロジェクトにおいても、IoTとAIの活用がしきりに叫ばれています。

・ AI(人工知能)

人工知能とは、「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術(東京大学、松尾豊先生による定義)」で、かなり広い概念です。例えば、コンピュータゲームにおいて、1人プレイ時に対戦相手を務めるコンピュータも人工知能の1種と言えます。

・ 機械学習

AIと混同されがちな単語に、機械学習があります。機械学習は、プログラムが自ら「学習」し、よりよい性能へと成長するようなテクノロジーで、AIよりも狭い概念です。ただし、現在ではほとんどの文脈でAIと同様の意味として扱われているようです。

機械学習には、大きく分けて教師あり学習、教師なし学習、強化学習の3種類があります。教師あり学習は、教師データとよばれるデータをもちいてプログラムを学習させ、未知の入力に対して望ましい出力を得ようとするもので、大きく「回帰」と「分類」に分けられます。教師なし学習は、データそのものの特徴を自動で抽出するもので、「クラスタリング」や「次元削減」などが該当します。
強化学習は、プログラムが「どのような行動を取れば大きな報酬を得られるか」を考えながら試行錯誤を繰り返し、成長するものです。特に囲碁や将棋などのゲーム用AIで多く用いられており、囲碁の「AlphaGo(アルファ碁)」、将棋の「Ponanza(ポナンザ)」などが有名です。

・ ディープラーニング(深層学習)

ディープラーニングとは、機械学習の手法の1つで、「ニューロン」と呼ばれる構造を多数利用して計算を行います。教師あり学習、教師なし学習、強化学習のいずれにも適用できます。ディープラーニングのアイデア自体は古いのですが、高いコンピューティング性能と大量のデータ必要であることから、長い間日の目を見ずにいました。しかし、コンピューターの性能が向上し、大量のデータを収集できるインターネット環境が整ったことから、特に2012年以降急速に注目を集めています。

近年のAIブームは、ディープラーニングが過去に類を見ない高精度を達成したことによって巻き起こりました。大量のデータを用意すれば高精度を達成できるディープラーニングは、大量のデータ収集を得意とするIoTと非常に相性が良いと言えます。世界中で、IoTとAIを組み合わせたサービスが作られつつあります。

IoTの国際標準化

システムの標準化(仕様の統一)は、新技術の普及促進や共通インフラによるユーザビリティ向上など、多数の利益を生み出します。IoTにおいてもさまざまな団体で標準化の議論が進行しています。


oneM2M

oneM2Mは、IoTの標準化プロジェクトの1つで、特に通信・ネットワークを中心に規格標準化を行っています。2012年に欧州、米国、アジアの7つの電気通信系標準化団体が設立しました。


JTC 1/SC41

JTCは、情報技術分野の国際標準化を行っている団体です。JTC 1/SC41は、JTCの中でも特にIoTの標準化を行う組織で、2016年に従来のWG7(センサーネットワーク)とWG10(IoT)を統合する形で発足しました。


IEEE P2413

IEEEは電気・情報工学分野の標準化機関です。IEEE P2413は、製造、ヘルスケア、物流といった異なる業界間の交流やフレームワーク策定を行っています。


Open Connectivity Foundation

Open Connectivity Foundation (OCF)は、IoTの標準化を進めている団体の1つです。インテルやサムスンなどが設立したOpen Interconnect Consortium(OIC)に、マイクロソフト、クアルコム、エレクトロラックスが加わる形で、2016年に発足しました。

IoTの学び方

メイカーフェア2018の様子

IoTを学ぼうと思った場合に、大きく2つのアプローチがあります。1つは、知識を習得する方法です。IoT関連の書籍を読んだり、セミナーを受講したり、といった勉強がこれに該当します。こちらの方法の場合、IoT関連の資格取得を目指してみると、モチベーションを保ちやすいかもしれません。

もう1つは、自分で実際にIoTシステムを作ってみる、という方法です。ベースとしてある程度の知識は必要ですが、実際にシステムを自作することで実践的なスキルが身につきますし、何よりも楽しいのが特徴です。おすすめは、M5Stackやobniz Boardを使ったIoT工作に挑戦することです。


IoT関連の資格試験

現在、IoT関連の資格として有名なものは、以下の2つです。どちらも民間資格となっています。

  • IoTシステム技術検定
  • IoT検定

資格① IoTシステム技術検定

IoTシステム技術検定は、MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)という団体が実施している資格試験です。2020年7月時点で、MCPCの幹事会員は株式会社NTTドコモ、KDDI株式会社、シャープ株式会社、ソフトバンク株式会社、株式会社東芝、日本電気株式会社、株式会社日立製作所、の7社です。

基礎(IoTアドバイザ)、中級(IoTエキスパート)、上級(IoTプロフェッショナル)の3つのレベルが設定されています。

基礎中級上級
試験方法選択式選択式講義+論述式
試験時間60分90分講義7.5時間
論述3時間
問題数60問80問論述(1,500~1,800文字程度)
受験資格どなたでも受験可能どなたでも受験可能いずれか1つを満たしていること。
・MCPC IoTシステム技術検定(中級)に合格された方
・情報処理学会のCITP有資格者
・早稲田大学スマートエスイー修了者
受験料(税込)11,000円11,000円または13,200円33,000円または55,000円

※ 情報は2020年7月時点のものです。詳しくはIoTシステム技術検定の公式サイトをご覧ください


資格②  IoT検定

IoT検定は、IoT検定制度委員会という団体が実施している資格試験です。コンピュータを用いたCBT試験で、特定の会場で通年受験ができます。

ユーザー試験(パワー・ユーザー)、レベル1(プロフェッショナル・コーディネータ)、レベル2(プロフェッショナル・エンジニア)、レベル3(プロフェッショナル・アーキテクト)、の4レベルが設定されていますが、2020年7月時点で実施されているのはユーザー試験とレベル1試験の2つです。(レベル2とレベル3は準備中とのこと)

ユーザー試験レベル1試験
試験方法選択式選択式
試験時間40分60分
問題数48問70問
受験資格どなたでも受験可能どなたでも受験可能
受験料(税込)8,800円11,000円

※ 情報は2020年7月時点のものです。詳しくはIoT検定の公式サイトをご覧ください


IoT工作について

IoT工作を行う場合、Raspberry Pi(ラズベリーパイ)やArduino(アルドゥイーノ)、といった開発ボードを用いることが一般的です。以下の記事で、IoT工作を始めるのに最適な4つの製品を比較しておりますので、是非ご覧ください。

また、「とにかく簡単にIoT工作をはじめたい!」「未経験だけどすぐにIoT工作をやってみたい!」という方には、obniz Boardが最適です。以下の記事で、obniz Boardについて詳しく解説しております。

IoTの導入方法

IoTを自社のビジネスに導入する方法はさまざまです。条件によっては自社で開発することもできるでしょう。ただし、システム開発には高い技術力が必要ですし、規模によっては相当数の開発要員を要します。したがって、ITベンダー等に開発をお願いするのが一般的です。

必要なシステムの要件が明確になっている場合、RFP(提案依頼書)を作成し、複数のベンダーから見積もりをもらって比較することをおすすめします。RFPとは、目的、目標、予算、スケジュールなど、ベンダーに要求する要件を記載した書類のことです。Web上にはRFPの無料テンプレートがいくつもありますから、それらを利用すれば作成は簡単です。

システムの要件が定まっていなかったり、そもそもIoT化すべきかどうか、という段階で悩んでいる場合も、IoTベンダーが相談に乗ってくれることがあります。また、やや予算は必要になるかもしれませんが、ITに詳しいコンサルティング会社を利用するのも良い選択です。


IoTの導入ならobnizにお任せください!

obnizは、私たち株式会社CambrianRoboticsが開発したIoTシステムです。IoTの試作・検証から運用まで、短期間で安価に実現します

■ obnizの特徴①:ファームウェアの開発が不要で導入コストが低い

obnizなら、クラウド上のソフトウェアをひとつ開発するだけで、すぐにIoTを始めることができます。ファームウェアをクラウド上に集約しているため、IoTデバイス側のファームウェア開発が不要です。したがって、導入コストを低く抑えることができ、導入スピードも短縮できます。

■ obnizの特徴②:仕様変更はひとつのプログラムを書き換えるだけ

仕様変更の際も、クラウド上のひとつのプログラムを書き換えるだけで対応できます。IoTデバイス上のプログラムを更新する必要はありません。これにより、ランニングコストを大幅に低減できます。
また、繋がれているセンサーの種類、コマンドやバージョンなどのハードウェアに依存する違いは、クラウド側のソフトウェアで吸収することができます。機器のばらつきを気にする必要はありません。

■ obnizの特徴③:パッケージ化されており専門知識が不要

obnizは電子回路設計、ファームウェア設計、ネットワーク設計、クラウド構築がパッケージ化されています。そのため、複雑な通信やネットワークの知識は一切不要です。開発の人材がいなくても、すぐにIoTを利用することができます。
また、自社でobnizのソフトウェア開発を行う場合も、豊富なSDKが皆様をサポート致します。さらに、お好きなプログラミング言語を利用できるため、例えばJavaScriptなどの比較的やさしい言語で開発することができます。C言語やJavaなどで複雑なプログラムを書く必要はありません。

obniz Solutionは、obnizでのIoT導入をサポートするサービスです。IoTの導入をご検討の企業様は、以下のページをご覧いただき、お問い合わせフォームよりお問い合わせください。また、「obniz Solution」のサービス、obnizの仕組みや導入のメリットをご説明した資料をご用意しています。無料でダウンロードできますので是非ご覧ください。