IoTを支える無線通信技術の種類と特徴

IoTとはInternet of Things(モノのインターネット)のことで、さまざまなモノをインターネットにつなぐ技術です。
本記事では、そんなIoTを支える無線通信技術について説明していきます。

IoTについては以下の記事で詳しく解説しておりますので、合わせてご覧ください。

IoTにおける無線通信の役割

IoTではモノ(IoTデバイスや他のスマートフォンなど)とインターネット(クラウド)の間で、データの入力、処理、フィードバックが循環して行われています。

IoTの基本的なシステムについては、以下の記事をご参照ください。

こうしたデータの送受信には通信技術が必要不可欠であり、データやデバイス、使用環境などに応じて、適切な通信方式がとられています。

たとえば、移動する自動車をインターネットにつなぐ場合と、自宅のスマートスピーカーとエアコンを連携させる場合とでは、求められる通信距離が異なります。
常時接続させておく場合と、短時間だけ接続する場合でも、使われる電力量が変わってきます。

無線通信にはどのような種類があるのか、どういったときに使われているのか、無線通信の基本を見ていきましょう。

無線通信の種類

距離による分類

無線通信技術は、通信距離によって

  • 短距離無線
  • 無線PAN(Personal Area Network)
  • 無線LAN(Local Area Network)
  • 無線MAN(Metropolitan Area Network)
  • 無線WAN(Wide Area Network)

の5つに分類することができます。

最初のアルファベットがそれぞれ何を表しているかを考えれば、距離の関係がわかりやすいですね。

それぞれの主な通信方式は以下のようになります。

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周波数帯による分類

無線通信は周波数帯によっても分類することができます。
周波数帯とは電波の周波数の範囲のことで、「周波数帯域」や「バンド」ともよばれます。

周波数帯が広いほど一度に多くのデータを転送することができるので、通信速度が速くなります。
そうした周波数帯が広く高速な通信回線を「ブロードバンド」といい、反対に周波数帯が狭く低速な通信回線を「ナローバンド」といいます。

Wi-Fi, Bluetooth, LTEなどはブロードバンド、BLE, LPWAなどはナローバンドという分類になります。

通信速度が速いほうが便利なように感じますが、通信速度が速くなれば、その分消費電力は大きくなります。
また、ブロードバンドであれば利用するのに通信費用がかかる場合もあります。
目的に応じて適切な周波数帯の通信を選ぶことが重要です。

代表的な通信方式

ここからは代表的な通信方式を取り上げ、それぞれの特徴を説明していきます。

NFC

nfc

NFCとはNear Field Communicationの略称で、NFCを搭載した機器同士を近づけることで通信ができる、近距離無線通信の技術です。

たとえば電車を利用する際に、多くの人が交通系ICカードを改札にかざすことで乗車賃を支払っていると思います。
このとき、交通系ICカードと改札はNFCによって通信を行い、ICカードにチャージされたお金で決済を行っています。

NFCには3つの規格があり、それぞれ異なる特徴を持っています。

FeliCa

ソニーが開発した、日本の独自規格です。
処理速度が高速であることと、高セキュリティであることが特徴で、日本では主にFeliCaが使われています。
交通系ICカードや電子マネー、スマートフォン決済などに加えて、ソニー製品をはじめとしてさまざまな家電にも搭載され始めています。

Type-A

オランダのNXPセミコンダクターズが開発した国際標準規格で、比較的安価であることが特徴です。
欧米で主に使われており、国内ではタバコの成人認証システムであるtaspoに使用されています。

Type-B

アメリカのモトローラが開発した国際標準規格で、CPUを内臓した高セキュリティな通信です。
Type-Aと同様に欧米で主流ですが、国内では運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなど、セキュリティが求められる場面で主に使われてます。

Bluetooth, BLE

bluetooth

Bluetoothは無線PANの一種で、数十メートルといった比較的近い距離で通信する規格です。

日頃からワイヤレスイヤホンを使っていて、スマートフォンとイヤホンをBluetoothで接続している、という人も多いのではないでしょうか。
キーボードやマウス、スピーカーなど、さまざまなものがBluetoothを利用して通信を行い、ワイヤレスで使用できるようになっています。

Bluetoothは消費電力が少ない通信方式で、長時間使用することができます。
また、通信を行う機器同士を認識させる「ペアリング」を行うことで、二度目以降は設定をしなくても自動接続ができ、すぐに使用することが可能となります。
こうした特徴から、日常的に使用するデバイスやガジェットでBluetoothが多く使われています。

BLEはBluetoothの一種で、Bluetooth Low Energyの略称です。
低電力・低コストを目的に開発されました。 Bluetoothがブロードバンドであるのに対し、BLEはナローバンドです。

BLEについては以下の記事で解説しているので、詳しくはこちらもご覧ください。
https://obniz.com/ja/doc/reference/common/ble/

Wi-Fi

wi-fi

Wi-Fiは無線LANの一種で、Wi-Fi Allianceという団体に認証された規格です。
無線LANはLocal Area Networkなので、同一の敷地内や建物内のネットワークで、Wi-Fiもそうした範囲で利用される通信方式です。

Wi-Fiはサイズの大きなファイルや写真、動画などを短時間で綺麗に転送できるように開発されてきました。そのため、通信速度が速く高機能であることが特徴です。
一方で、その分消費電力も大きくなっており、電源につながず長時間使用することには向いていません。

近年、災害時の情報伝達や観光面での必要性などから、Wi-Fi整備が全国的に推し進められており、Wi-Fiを利用できる場所が広がっています。
公共交通機関やカフェ、コンビニなどのWi-FiスポットでWi-Fiを利用することができます。
また、FONというグローバルWi-Fiコミュニティがあり、メンバーであれば世界150ヵ国2300万以上のアクセススポットでWi-Fiを使うことが可能です。

5G

5G

5Gは5th Generationの略称で、第5世代移動通信システムのことです。
移動通信というのは、携帯電話などの持ち運びができる通信機器を使ったコミュニケーションのことで、携帯電話の普及・発達とともに通信技術も開発が進められていきました。

1Gから4Gまでの特徴をまとめると以下のようになります。

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LTEは3Gの後に登場した規格で、Long Term Evolutionの略称です。
3Gをさらに高速化させ、4Gへの移行をスムーズにするために開発されました。
3.9Gとも呼ばれますが、4Gに限りなく近いため、現在では4Gと同様に扱われることが多いです。

5Gは「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」の3つを特徴としています。
1G〜4Gにおいても通信の高速化と大容量化が進められてきましたが、5Gではそれに加えて高信頼・低遅延と多数同時接続という特徴もあることから、さまざまな分野での活用やIoTでの利用に期待が高まっています。

LPWA

LPWA

LPWAはLow Power Wide Areaの略称で、少ない電力で長距離かつ広範囲の通信が可能な技術です。

LPWAには、ライセンスが必要な通信規格と、ライセンスが不要な通信規格とがあります。

無線通信は周波数帯や用途によって運用にライセンスが必要となります。
ライセンスが必要な通信は、一般的に通信事業者が国から許可を得てその周波数帯を利用しているため、その通信を利用する際には費用がかかります。

LPWAのライセンスによる分類は以下のようになります。

ライセンス系LPWA

  • SIGFOX
  • LoRaWAN
  • Wi-Fi HaLow
  • Wi-SUN
  • ELTRES
  • ZETA
  • RPMA
  • Flexnet

アンライセンス系LPWA

  • NB-IoT
  • LTE-M
  • Cat.NB1

IoTでやりとりするモノのデータはあまり大きくないので、大容量で高速に通信ができることよりも、消費電力を抑えて長期間使用できることが求められます。
そこで、ナローバンドの低速通信によって省電力で長距離通信が可能なLPWAは、IoTで広く利用されています。

LPWAなどの通信技術の向上によって、IoTも今後ますます発展していくことが期待されます。