近未来の扉を開ける「Society5.0」×「STEAM教育」

IoTやAI、ロボット技術など高度なテクノロジーがあらゆる領域で必要とされ、普及しつつある現在、私たちは次の時代への過渡期に立っていると言えます。このコラムでは近未来の日本を理想的な社会へ導くための重要なKeyword、「Society 5.0」と「STEAM教育」について解説します

Keyword「Society5.0」とは

日本で超少子高齢化が進む一方で世界規模では人口が増大しており、食料資源・鉱物資源の大幅な減少、各地の都市化や異常気象による環境破壊が問題となっています。同時に、21世紀以降のテクノロジーの急速な進化と普及によって、産業や社会の構造そのものが劇的に変化してきました。
世界中のさまざまな課題を探究し解決していくスキルと、新たな価値となるものを自ら創りだす力が、今まさに人々に求められています。

日本政府は、10年先を見越した科学技術振興を目的に「科学技術基本計画」を定期的に改訂、発表しています。2016年に閣議決定された『第5期科学技術基本計画※1では、理想の未来社会の概念が打ち出されました。それが、「Society 5.0」です。

※1:第1期の対象期間は2004年~2008年(平成8~12年度)、第2期は2009年~2013年(平成13~17年度)、第3期は2014年~2018年(平成18~22年度)、第4期は2015年~2019年(平成23~27年度)、第5期は2016年~2020年(平成28年度~令和2年度)

この概念では、まず人類の歩みを進化・発展ごとに区分化し、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)としています。

情報社会(Society 4.0)ではインターネット、携帯電話やスマートフォンを通じて世界中がネットワークで繋がる一方、飽和する情報へ私たちがその都度アクセスして、取捨選択しなければならない不便さがあります。
また、日本では超少子高齢化や地方の過疎化により、労働力の減少も大きな課題になっています。実際に、総務省の「労働力調査」※2では2020年時点で15歳~64歳の労働力人口※3は約5946万人で、前年より34万人も減少しています。
※2:総務省 2020年(令和2年)「労働力調査」平均結果の概要より
※3:労働力人口とは、15 歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口のこと


第5期科学技術基本計画』の概要では「Society 5.0」を、「必要なモノ・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細やかに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」と説明されています。

「Society5.0」の形成には、IoTシステム、ビッグデータ、サイバーセキュリティ、AIやデバイスなどがサービスプラットフォームの基幹技術となります。同時に、ロボット技術、センサ技術、アクチュエータ、バイオテクノロジー、ヒューマンインターフェース、光・量子テクノロジー、素材・ナノテクノロジーが新たな価値あるものを創りだすコアの技術となります。

「Society5.0」は、高度な先端技術とあらゆる情報、データをあくまでも手段として使いこなし、人々が物理的・時間的・身体的な制約を越えて快適に生きてゆける社会です。言い換えれば、労働力・医療・食・防災・資源・エネルギーなど世界が抱えてきた課題への解決策が生まれ、新しい産業や多くのチャンスが創り出される、持続可能な社会でもあります。
『第5期科学技術計画』ではそれを「サイバー空間とフィジカル空間(現実社会)が高度に融合した社会」、「深化した超スマート社会」と定義しています。

では、「Society5.0」の実現に最も必要なものは何でしょうか?それは、次世代教育です。

Keyword 「STEAM教育」とは

2000年以降にScience(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Mathematics(数学)の領域を横断的に学ぶ「STEM教育」が、アメリカを中心とした先進諸国で広まりました。背景には4分野を総合的に学べるカリキュラムが不十分だったことや、科学技術開発を担える人材の不足が挙げられます。

アメリカではブッシュ政権下の2006年に、国際競争力の強化を念頭に理数系人材やテクノロジー開発者を育成する取り組みがスタートしました。
その後、「STEM教育」を公約のひとつとしていた民主党のバラク・オバマ氏が大統領に就任し、2009年に “Educate to Innovate” キャンペーンにて「2019年までにアメリカのSTEM教育を世界トップレベルへ引き上げる」目標を掲げました。そして、2013年に発表された5か年計画 “Federal Science, Technology, Engineering, and Mathematics (STEM) Education 5-year Strategic Plan”では、年間約29億ドルもの費用を投じる国家戦略に位置付けられました。さらに、2015年にはコンピューター科学まで網羅した「STEM教育法」※4が連邦議会で成立しました。
こうしたアメリカ政府の動きが、「STEM教育」を広めていく大きなきっかけとなったのです。

President Obama asks America to learn computer science (2013)

近年では、「STEM」にArt(デザインまたは教養)の頭文字と概念を加えて、理数系から歴史・芸術・デザイン・リベラルアーツなどの領域まで横断的に学んでいく「STEAM教育」が主流となっています。
そして、「STEAM教育」での総合的な学びを通じて課題解決力や創造性を伸ばし、次世代の担い手を育てることが先進諸国での重要な取り組みとなっています。

※4:STEMからSTEAMという潮流に合わせる形で、アメリカ「STEM教育法」は2017年に「STEAM教育法」へ改正

日本では2002年度より、科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を文部科学省が指定する「スーパーサイエンススクール(SSH)」支援事業を開始しています。
しかし「Society5.0」を早期に実現するには、小・中学校の段階からの情報教育、そして理系・文系の区別のない横断的な学びである「STEAM教育」の実践が重要です。
そこで2014年以降、文部科学省は中央教育審議会や有識者会議での検討を重ね、教育機関のICT環境整備計画と学習指導要領の改訂に踏み切りました。

ICT環境については2018年から2022年までの5か年計画にて、超高速インターネットと無線LANの100%整備をはじめ、学習用・指導用コンピュータの整備などが目標となりました。
小・中学校の新学習指導要領では、プログラミング学習について2018年度からの先行実施を許可しつつ、小学校は2020年度から必修化(全面実施)、中学校は2021年度より全面的に内容強化としました。
高等学校では、2005年度以降プログラミング学習のない「社会と情報」とプログラミング学習を含む「情報の科学」いずれかの選択制でしたが、新学習指導要領にて必修科目「情報Ⅰ」と、より高度な選択制科目「情報Ⅱ」へ再編され、2022年度の新入生から全面実施となります。

ICT環境整備と学習指導要領改訂の計画に足並みを揃えて、「STEAM教育」を推奨する提言も行われました。
2018年6月に発表された文部科学省「Society5.0に向けた人材育成 ~社会が変わる、学びが変わる~」では、高等学校での理系・文系分けの改善や「STEAM教育」が推奨されています。そして、翌2019年6月に発表された経済産業省「未来の教室」ビジョンでは、小・中学校からの「STEAM教育」導入が提言されました。
つまり、アメリカや他先進諸国と同様、日本でもプログラミング学習を含む「STEAM教育」は国の目指す大きな方針となったのです。

現在、各教育機関の先生方は生徒たちへどう指導を進めていくか、さらなる工夫や努力を重ねている最中です。やがて近い将来、「STEAM教育」で学びを深めた世代が世界中をつないで活躍していく時代が訪れます。
私たちは先進技術『obniz』を通じて、「Society5.0」の実現と「STEAM教育」双方を支援し続けていきます。


株式会社obnizは、複雑な予備知識がなくともプログラミングを実行でき、IoTやAIに取り組めるテクノロジーを開発した企業です。代表的公式製品『obniz Board』シリーズは、小学生から大人まで幅広い年齢層の方に愛用されてきました。

小中学生向け科学雑誌『子供の科学』とのコラボワークショップや、日本最大の教育展示会『教育 総合展(EDIX) 東京』で開催される「STEAM教育 EXPO」、企業研修やハッカソンなどで、教育用途での活用法やメリットをご紹介する機会も設けています。
各種イベントやワークショップ開催の際には、公式サイト、SNS、メールマガジンからお知らせしています。関心のある方は、お気軽にご参加ください。

なお、教育分野における活用事例などの情報、およびお問合せ先については以下のリンク先をご参照ください。

「プログラミング教育や教材メーカーを支援するobniz」

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