IoT(Internet of Things、モノのインターネット)とは、さまざまなモノをインターネットに接続する技術です。本記事では、IoTの活用によって小売業界がどのように変わることができるのか、また実際にどのような取り組みが行われているのかをご紹介いたします。
IoTについては以下の記事で詳しく解説しておりますので、合わせてご覧ください。
コンテンツ
小売業界の現状

EC・ネット通販の台頭、実店舗のショールーム化
近年、インターネット上での購買行動(EC)が盛んになっています。実店舗とは異なり、24時間どこからでも購入できるため、買い手にとって非常に利便性が高くなっています。また、売り手にとっても「家賃や人件費を削減できる」といったメリットがあります。新型コロナウイルスの流行を契機に、実店舗からECへの移行はさらに加速するでしょう。(obnizも、Amazonや自社ECサイトで商品を発売しております)
家具・家電や自転車など、かなりの高額商品であっても、インターネットで購入できる時代になりました。「実物を確認したいから実店舗にいくけれども、購入はネットを利用する」という層も増えています。すなわち、実店舗のショールーム化が進んでいる、と言えます。
人件費の高騰
小売業に限った話ではありませんが、近年は人件費の負担が深刻です。店舗は、あの手この手で人件費の削減を図っています。例えば、コンビニエンスストアで働いている店員さんは、外国の方の割合が増えてきましたし、店員不要の「セルフレジ」の導入も進んでいます。今後も、「いかにして人件費を削減するか」というのは、小売業界の最も大きな課題の1つです。
決済手段の多様化
キャッシュレス化が推進されたことで、決済手段も多様化しました。支払い用のスマートフォンアプリは、一体何種類あるのでしょう…。支払いのほとんどが現金であった時代と比べて、レジの店員さんの負担は増加しています。もし支払いを自動化できれば、店員さんの負担を大きく減らすことができるでしょう。
小売業界へのIoTの活用方法

IoTは、このような小売業界の現状を大きく改善できるテクノロジーとして期待されています。小売業界へのIoTの活用方法をご説明します。
値札や広告の自動・遠隔管理
値札や広告をディスプレイにしてインターネットと連携させれば、表示する内容を遠隔操作できるようになります。世界中のあらゆる店舗の任意の値札・広告を、管理者が自由に操作できるのです。店員が1つ1つ変更する手間を全て省くことができるため、大幅なコストカットにつながります。
さらに、カメラを設置したりスマートフォンと連携するなどして、目の前にいる顧客を自動識別できるようなシステムを用意すれば、顧客ごとに最適な広告を出し分けるということもできるようになります。
商品や機器の自動管理
IoTを用いることで、商品や機器類の自動管理が可能になり、従業員の負担を削減できます。例えば、商品棚にカメラや質量センサー、温度センサーを設置し、それをIoT化してインターネットに接続することで、在庫量や温度をリアルタイムに遠隔管理・自動管理することができます。
他にも、例えばコーヒーマシンにセンサーを設置してIoT化すれば、豆の不足やマシンのトラブルを自動で検知できます。在庫量のリアルタイムな管理によって、より効率的な発注も可能になるでしょう。
レジの無人化
スマートフォン決済システムを導入することで、レジを無くすことができます。例えば、スマートフォンのカメラでバーコードを読み取って料金を計算し、そのままアプリで支払いを済ませるようなサービスが考えられます。この場合、お客様はレジに並ぶ必要が一切ありません。
顧客ごとの購買データを取得
スマートフォンアプリなどによる決済では、個人の購買データをインターネット上に蓄積することが可能です。このデータは、マーケティング戦略を策定する上で非常に有益なものとなるでしょう。また、アプリ内や連携先のECサイトでその顧客毎に最適な商品をレコメンドすることもできます。
警備の自動化
万引きや強盗などへの対処でも、IoTが活躍します。店内の監視カメラをインターネットに接続し、AI(人工知能)などと連携することで、不審者やトラブルの自動監視が可能になります。警察や救急隊に情報を自動連携することもできるでしょう。
小売業界のIoT導入事例
ローソンスマホレジ:ローソン
株式会社ローソンでは、2018年からスマートフォンアプリを利用したレジ無し決済サービス、「ローソンスマホレジ(旧:ローソンスマホペイ)」の提供を開始しています。
このサービスは、商品のバーコードをスマートフォンアプリで読み取り、アプリ内で支払いを完結させられるというもの。つまり、お客様はレジに並ぶ必要が全くありません。混雑時もスムーズなお買い物ができます。
ローソンスマホレジは、ローソンの公式アプリから利用できます。利用可能店舗はまだ限られているので、その点は注意が必要です。今後の普及に期待しましょう!
(参考:https://www.lawson.co.jp/company/news/detail/1363891_2504.html)
次世代型コンビニエンスストア:ファミリーマート、Panasonic
2019年、ファミリーマート株式会社とパナソニック株式会社は、IoTを活用した「次世代型コンビニエンスストア」の共同実証実験を行いました。この実験では、ファミリーマート佐江戸店に、
- 顔認証技術による入店管理・決済
- 画像処理によるレジでの自動商品読み込み
- 欠品情報や混雑状況などが表示される、店員向け小型ウェアラブル端末の活用
- 電子棚札、電子POPによる、値段や広告表示の自動切り替え
- 滞留ヒートマップデータやスマートフォンアプリによるアンケート結果の、マーケティングへの活用
- プロジェクションマッピングやデジタルサイネージによる、イートインスペースの演出
- スマートフォンアプリと連携したデリバリーによる商圏の拡張
- 対面翻訳技術による接客サービス
といった様々な技術が投入されました。まさに、未来のコンビニの実証実験でした。これらの技術が、全国のコンビニに展開される日が待ち遠しいですね。
(参考:https://biz.panasonic.com/jp-ja/case-studies/family)
かざしてレシピ:東急
2016年から2017年にかけて、東京急行電鉄株式会社は東急ストア中目黒本店において、スーパーマーケット業界初のIoTデバイスを利用したレシピ配信サービス、「かざしてレシピ」のテストマーケティングを行いました。
「かざしてレシピ」は、売り場に設置された「スマートプレート(株式会社アクアビットスパイラルズ提供)」にスマートフォンなどのNFC対応機器をかざすと、「みんなのきょうの料理(株式会社NHKエデュケーショナル提供)」に掲載されている食材やテーマに沿ったレシピ情報が配信されるというサービス。得られた顧客動向データは、マーケティング施策立案にも活用されます。
(参考:https://www.tokyu.co.jp/file/161216.pdf)
amazon go:米アマゾンドットコム
amazon goは、米アマゾンドットコムが展開する、レジの無いコンビニです。棚からとった商品をそのまま自分のカバンやリュックサックに入れて退店することができます。2018年1月に出店したシアトルの第一号店を皮切りに、その数は全米で20店舗以上まで増えています。
ここで問題となるのは、「誰が、何を取ったのか(戻したのか)」をどう判断するか、ということです。実は、この技術の詳細はあまり明らかになっていません。Amazonのビッグイベント、「re:MARS」で公開された情報によれば、amazon goの店内には無数のカメラが設置されており、ディープラーニング等を用いた複雑な画像解析が行われているということです。
(参考:https://www.amazon.com/b?node=16008589011 https://iotnews.jp/archives/141678)
小売業界以外へのIoT活用
IoTが活用できるのは、小売業に限りません。本メディアでは、さまざまな業界におけるIoTの活用方法・活用事例の紹介をしています。以下の記事も合わせてご覧ください。