【スマートロジスティクス】物流業界のIoT導入事例

IoT(Internet of Things、モノのインターネット)は、さまざまなモノをインターネットに接続する技術で、あらゆる業界に変化をもたらす革新的なテクノロジーです。もちろん、物流業界も例外ではありません。IoTのような最新技術を用いて物流の効率を高める取り組みを「スマートロジスティクス」と呼びます。

物流は、IoTによってどのように変わることができるのでしょうか。本記事で詳しく解説いたします。

IoTについては、以下の記事で詳しく解説しておりますので、合わせてご覧ください。

物流業界の課題

まず、現在物流業界が直面している課題を確認します。物流業界は年々その負担が増える一報で、労働力が十分とは言えない状況にあります。

小口配送の増加による負担増

昨今、インターネット上での購買行動が活発化しています。Amazonや楽天に代表されるネット通販、ECが活発になっているのはもちろん、メルカリ等のCtoC(個人同士)の取引も急増しています。これによって、少量・小額の配送(小口配送)の数が増大しています。

小口配送が増加しているということは、仕分け作業や配送の労力が高まることに加えて、トラック1台、配達員1名で輸送できる荷物の価値が減っている、ということを意味します。物流業界は、今まで以上にコストと抑える必要が出てきています。

労働力の不足、配送ドライバーの高齢化

物流業界では、労働力不足が深刻です。仕分け作業や配送作業のなかには、労働環境が過酷であったり、低賃金であったりするものもあります。また、配送ドライバーの高齢化も進んでいます。

物流業界におけるIoTの活用アイデア

負担増、労働力不足に苦しむ物流業界ですが、これらの問題を解決するテクノロジーとしてIoTが期待されています。ここでは、具体的なIoTの活用アイデアをご紹介します。

荷物情報を自動取得し在庫管理を効率化

物流センターでは、入出荷や帳簿の作成等の作業全般を管理する倉庫管理システム(WMS、Warehouse Management System)が利用されることがあります。この時、荷物1つ1つの位置をリアルタイムに把握して倉庫管理システムと連携すれば、在庫の照会、補充、履歴管理などを自動化できます。

位置情報の取得には、RFIDタグなどが利用できます。RFIDタグは、通信機能をもった小型のタグで、荷物などに貼り付けることができます。物流施設にRFIDを読み取る機器(リーダライタ)を設置することで、個々の荷物の位置を一元管理することができます。

個別の温度管理を実現しサービスの品質を向上

クール便などの温度管理が重要な荷物について、1つ1つの温度を瞬時に取得できれば、より良い品質で荷物をお届けすることができるでしょう。これらは、IoTを活用することで実現できます。

温度取得が必要な場合は、通信機能を持った温度計を活用できます。小型の温度計を貨物内や倉庫内に置いておけば、インターネット経由でいつでも温度を確認できます。温度計を目視で確認する必要はありませんし、異常な温度で自動的にアラートを出すようなシステムをつくることも可能です。

例えば、ユーピーアール株式会社のソリューション、「World Keeper」は、世界の様々な場所へ配送される荷物をどこからでもリアルタイムに監視・管理することができ、温度異常が発生した場合に自動でメール通知されます。

(参考:World Keeper|物流機器・輸送機器のレンタル | upr

データを元に配車計画を最適化

運送トラックにIoTデバイスを搭載することで、荷物の積載情報や配送場所、配送時刻などのデータを収集できます。このデータを元に、より効率的な配車、配送ルートを設計できるかもしれません。データがあれば、コンピューター上のシミュレーションが可能になるため、さまざまな実験が可能になります。

自動運転による配送

昨今、自動運転車の開発が急速に進んでいます。もし、運送トラックが自動運転になれば、運送コストが劇的に下がることになります。

この自動運転車にも、IoTが活用されます。自動運転車はセンサーから得られる大量のデータを高速で処理し、エンジンやモーター、ハンドルの制御を行う必要があります。米インテル社の試算では、自動運転車が処理すべきデータは1台あたり1日4000ギガバイトにもなり※1 、自動車に搭載されたコンピューターのみで処理するには限界があります。そこで、自動車をIoT化して外部のクラウドと接続する構想があります。

また、自動運転を行う上では、自動車同士で道路状況を共有したり、渋滞情報や天気予報などを逐次取得できたほうが良いでしょう。このような、外部との通信機能を備えた(=IoT化された)車を、コネクテッドカーと呼ぶこともあります。

(※1:インテル® GO™ 自動運転ソリューション

物流業界でのIoT導入事例

既に物流業界で導入されている、IoTの活用事例をご紹介します。

ミスタードーナツの新物流システム:NEC、ダスキン

2012年、NECはダスキンが展開する「ミスタードーナツ」の物流センターにある主要な原材料の総在庫数をリアルタイムに把握・管理できる、新物流システムを構築しました。

全国12箇所の物流センターから約1300店舗に供給する主要な原材料の、入庫・出庫を一元管理することで、全国の各物流センターの在庫が本部だけでなく、どの物流センターからも確認可能となり、在庫状況に応じて出荷物流センターを切り替えるなど、タイムリーで効率的な輸送指示を可能としています。

加えて、無線ハンディターミナルと、二次元バーコードを導入。原材料仕入れ先から納品される商品ケースに二次元バーコードを貼付し、その情報を物流センターの入荷・格納・出荷のみならず、店舗への納品時における受入検品や棚卸にも継続して活用しています。賞味期限切れ・出荷期限切れ在庫については、自動的にアラームリストが出されるため、不要な在庫移動や廃棄処理業務が軽減されました。

(参考:NEC、「EXPLANNER/Lg」を用いてミスタードーナツの新物流システムを構築(2012年6月27日): プレスリリース | NEC

IoT動態観測サービスでダイヤ変更時の検証時間を半減:Hacobu、豊田自動織機

株式会社Hacobuは、「運ぶを最適化する」をミッションとする注目のベンチャー企業です。Hacobuが提供するサービスの1つ、「MOVO Fleet」は車両位置をリアルタイムで見える化できるサービスです。

フォークリフト等で圧倒的な販売実績を誇る豊田自動織機は、MOVO Fleetの導入によって、ダイヤ変更時の検証にかかる時間を月間12時間から6時間に半減。ダイヤが守れていない場合の見直しも、運行データが即時確認できることで効率的に進められるようになったということです。

(参考:豊田自動織機 | MOVO | クラウド型物流ソリューション

物流業界以外へのIoT活用

IoTが活用できるのは、物流業界に限りません。本メディアでは、さまざまな業界におけるIoTの活用方法・活用事例の紹介をしています。以下の記事も合わせてご覧ください。

製造業

農業

自動車(MaaS)

小売業