IoT(Internet of Things、モノのインターネット)は、製造業において大幅なコストダウンを可能とする革新的な技術であり、すでに多くの企業が注目しています。本記事では、IoTを活用した製造業におけるコストダウンの具体例を取り上げます。
コンテンツ
IoTとは何か
IoTは、モノのインターネットとも呼ばれる通り、「さまざまモノがインターネットに繋がっている状態」を指しています。従来、インターネットに接続されるものは大型のコンピュータや一部の携帯電話・スマートフォンなどに限られていましたが、技術革新によって多様なモノがインターネットに接続できるようになりました。
IoTについては、以下の記事で詳しくご説明しておりますので、是非ご覧ください。
製造業へのIoT導入で可能になること
IoTでは、モノがインターネットにつながることにより、モノのデータを「瞬時に」「どこからでも」取り出すことができます。また、モノに対して、「瞬時に」「どこからでも」命令を行えるようになります。
これらの特徴から、IoTによって以下が可能になります。
状態の遠隔監視
例えば、温度計や加速度センサをインターネットにつないでおけば、そのセンサーの情報を世界中のどこからでも確認することができます。
温度や水道メーターといったセンサー・メーター類の情報を取得するために、毎回現場に赴いて値を確認するのは大変な手間です。また、人が近づくのが危険な場所に設置されている場合もあるでしょう。
これらのセンサーをインターネットに接続することで、データを簡単に取得することができ、大幅なコストダウンにつながります。全国に展開しているセンサー類を、1ヶ所のデータセンターで中央管理することも可能になります。

私たちCambrian Robiticsが提供しているIoTデバイス開発用ボード「obniz Board(オブナイズ ボード)」を利用すると、これら各種センサーの遠隔監視システムを簡単に構築できます。 短期間、低コストで実装できるので、PoC(Proof of Concept、概念実証)の実施やIoTのスモールスタートに最適です。アプリケーションの開発も承っていますので、お気軽にお問い合わせください。

アクチュエータの遠隔操作
モーターやディスプレイといったアクチュエータ(電気を動きや音・光などに変えるもの)をインターネットにつないでおけば、世界中のどこからでも、そのモーターやディスプレイを操作することができます。
故障の自動検出・事前察知
産業用ロボットや建設機械などの複雑な機器は、故障やトラブルが発生した場合にそれを素早く検知することが大変重要です。これを1つ1つ人の目で確認するのは、大変な労力です。ここでも、IoTが活躍します。
壊れそうな部分に状態を監視するセンサーを張り巡らせ、それをインターネット経由で監視することで、異常を素早く検知できます。故障に至る前に、「普段より温度が高い」「異音がする」といった故障の前兆をとらえることで、故障を未然に防ぐことも可能です。
さらに、AI(人工知能)を活用すると、正常な動作とことなるデータを検出した際に、自動でエラーを通知するようなシステムを構築することもできます。この場合、正常に動作している状態(定常状態)のデータを収集してAIにあらかじめ学習させておく手法が多く用いられます。

製造業におけるコストダウンの具体事例
IoT工具
IoT工具は、インターネットに接続可能な工具です。例えば、
- 指定した回数だけ動作させると動作が停止する
- 前工程の工具の使用が終わるまでは、動作しない
といった制御が可能になります。これを活用することで、作業の順番を間違えたり、ボルトを閉め忘れてしまったりといったミスを減らすことができ、作業時間が削減されます。さらに、作業員が作業工程を覚えるのにかかる労力も大幅に減少し、結果として大きなコストダウンにつながります。
以下の動画で紹介されているのは、ヘルツ電子株式会社様が提供しているIoTスクリュードライバです。マキタ製スクリュードライバをIoT化してインターネットに接続し、「3か所締結作業を行うと、”OK”表示され、次の工程へ進むことができる」という制御を可能にしています。
航空機の診断サービス
また、細かいデータを取得・分析することで、明らかな故障が発生する前に、故障を事前に予知できることがあります。たとえば、航空氏エンジンメーカーの米GE・アビエーション社と、通信大手の米AT&T社は、IoTを利用した航空機の状態監視サービスを発表しています。
航空機にセンサーを設置し、フライトを終えた航空機のデータを解析することで、トラブルの発生状況や部品交換の必要性などをすばやく知ることができます。航空機は世界中を飛び回りますが、AT&Tのネットワークを利用することで、どこにいても診断を受けることができるのです。
(参考:GE Aviation Press Center, GE Aviation and AT&T Enable Aircraft Health Monitoring https://www.geaviation.com/press-release/digital-solutions/ge-aviation-and-att-enable-aircraft-health-monitoring)
昇降機のバッテリー状態やシステムエラーの遠隔監視
私たちは、階段昇降機やホームエレベータを販売するティーケー・ホームソリューションズ・ジャパン株式会社(旧社名:ティッセンクルップ・アクセス・ジャパン株式会社)様に、obnizを用いた監視システムを提供いたしました。既存の介護装置にobnizを取り付けることで即時IoT化。全国の端末のバッテリー電圧やエラーをリアルタイムに確認可能となり、保守管理の精度の向上につながりました。こちらの開発期間や料金を、ダウンロード資料にてご案内しております。
課題 | ・不定期に使用する機器のため、バッテリー劣化の時期も一定ではなく、定期的に現地を訪問し目視で確認する必要があった ・導入前は顧客からの電話連絡でエラー発生を確認。発生したエラーを特定するために、現地を訪問し目視で確認する必要があった |
利用した製品 | ・obniz Board ・アタッチ基板(カスタム制作) |
obnizで実現した機能 | ・常時遠隔監視:バッテリー電圧およびエラーを obnizでクラウドから監視 ・遠隔操作:クラウド管理画面から機器リセットを実行 |
導入による効果 | ・バッテリーの利用状況をリアルタイムに監視することで、劣化の予測、定期交換時期の最適化につながる ・管理画面での、エラー通知・遠隔リセットにより、サポートコストの削減とユーザー体験の向上につながる |
工場における製造工程の評価
比較的大きなスケールのコストダウン施策として、製造工程の監視があります。使用する機器類(例えば産業用ロボットやフォークリフトなど)をIoT化して動作を把握することで、工程におけるムダの発見が可能になり、コストダウンを含めた改善が可能になります。
例えば、株式会社小松製作所(コマツ)様では、
- 工場における工作機械やロボットなど生産設備や生産ラインの稼働情報をIoTにより見える化し、共有データベースに集約
- 集約された情報に基づき、生産工程の改善案を立案して、面積生産性向上、省人化、および生産リードタイムの短縮を実現
といった、IoTによる業務改善を実施しています。
(参考:小松製作所 ニュースリリース コマツ流「つながる化」による生産改革に着手 https://home.komatsu/jp/press/2015/others/1187796_1581.html、コマツテクニカルレポート2016 VOL.62 NO.169)
ビーコンを用いた人の動きの監視
人の手で製造を行っている現場では、ビーコン等による人の移動の可視化も有効です。作業員一人ひとりに、位置情報を発信するビーコンを装着することで、作業中の従業員の動きを明らかにすることができ、ムダや改善点の発見を可能にします。
これを実現するソリューションとして、BLE(Bluetooth Low Energy)を用いたビーコンがあります。例えば、iPhoneなどのiOSの端末には、「iBeacon」と呼ばれるBLEビーコン機能が備わっています。
(参考:iBeacon – Apple Developer https://developer.apple.com/ibeacon/)
製造業以外へのIoT活用
IoTが活用できる産業は、製造業に限りません。本メディアでは、さまざまな業界におけるIoTの活用方法・活用事例の紹介をしています。以下の記事も合わせてご覧ください。